お風呂にはいらなくちゃ
かきごおりを砕いたジュースがとても歯にしみる、寝てる間のみこんだレモン味のガムが、びっくりして胃からとびだしてきた、執着。
あたまがギャンブルにかじりついている。ひとりでいると踊ることができるのに、誰かがいる時、段階のある電源が煌々とうるさいまま私の意思では動いてくれないので雨が降っているようだ。
これは妄想、それは現実、これは妄想、身体のスキャン、ブロッコリーみたいに生えてくる人間の頭、ありがとうのクッキーとメッセージカード、軽蔑、繰り返す、のどになにかツカえる、機関をつむる、今度はアイスクリームで歯がしみる、洗面台が、白く輝いている。
おとなおとなアラサーはたち
これは今は黄金の飴玉、幸せの味がこない
舐めても舐めても5時間後のガムの味
飽きちゃった?もしかして
飽きって、鬱陶しいから離れたいっていう種類のさみしさ
幸せって結局なんなの?多分あの先輩なら知ってるんじゃないかってたわごと、スクリーンタイムのせいで検索ができないので妄想でおしまい。気をつけよう、二足歩行と少女趣味。歌がうまくなりたい、一人で生きたい、仕事がしたい、働きたくない、結婚したい、やっぱり痩せよう、筋肉が必要?それとも整形?あ、ディズニーランドに住みたい!でもここにはお金もかわいさも尊厳もない。どうでもいいから愛されたい、愛されてない。このぶさいくな顔なんとかして!いい加減にして!いい加減にして!いい加減にして!
良い加減ってなんだよっ、言いたくないなら言うなよ、自慢なら自慢だと堂々と言えよ、可愛くないな。可愛くなりたい。可愛くなりたいって字面から似合わなかったら、努力する資格すらないってこと?スタートラインってどこ?スクランブル交差点(って言葉のエモ)、あの横断歩道のどれかがスタートラインってほんと?嘘?錯乱、さくらんぼの価値、セカストで40円
海の中
森のおくには星があり、星のなかに教会があり、教会のなかには古ぼけたピアノとヤニくさい神父がおり、ぼくはいつもはそこから会話をしている。ときどき、向きが同じでも、あまりに届いていないことがあって、思わず全然違うよ、と叫んでしまう、なぜかそれだけはよーく届いて、森のそとの誰かはもっともっと少しずつ遠くなっていくのだ。喉まで上がって溢れる涙、それからずーんとお腹の下のほうまで重たく安堵しきる心臓。これを繰り返す生命活動。なんていうか効率が悪いっていうか、そのわりにそれだからすぐおなかがすいて燃費が悪いっていうか、まぁ良い、カラフルな咀嚼が目に毒で、空気はきれいだったり汚かったりする、そんなかんじでなんとかやっていける、幸福を、このなかから拾い集めて。
GWって天気がいいよね
大きな赤いバラの花束を抱えて彼がやってきた、
僕にはわかる、これが運命であるということが。僕には、きみのことが手に取るようにわかる、僕たちはわかり合える。さぁ受け取って。共に生きよう。
そしてひざまずく。
「わかってないじゃん」
「え?何?何が?」
「ぜんぶだよ。あなたよくわかるよっていうけど、私の周りのことも私の知らないこともわかってくれないとそんなのわかってるって言わないのに、どうしてわかるよ、なんていうの?それは、その瞬間だけの宝石みたいなもので、あとから売りに出しても価値がないってされるような、お寿司屋さんのおまけのおもちゃみたいな……。だから、おとな、おとなとして扱われる私は、あなたを、あなたの言葉を、信じたらいけないの?」
「きみは完ぺき主義なんだね」
「そんな話はしてないよ」
「海に行こうか?」
「海は嫌い、砂が目にうざったいし、べたべたしてめんどうだし、嫌いな人がいそうだし」
「でもきみは海が好きだって言ってたじゃないか」
「そんなこと言ってたかな、でもそれって服が目いっぱい詰まったクローゼットの前で、服がない!って言ってるのと同じ「好き」だったと思うよ」
「いきなりどうしたの?」
「気温差とか、TPOとか、今日の私の気分、水分量、血流、ホルモンの居所、そういうのにぴったりくる服が着たいのに、でもそんなものはここにはなくて、それで服がない!って叫んでるんだよ。海が好きだって言ったのは、その日の気温と、TPOと、私の気分、水分量、血流、ホルモンの居所が、海が好き!って叫ぶのにぴったりだったからで、いまさら好きだったよね、なんていわれても困るよ」
「二枚舌だって言われたことはある?」
「ないよ、嘘がうまいから。」
「じゃあ海が好きだって言ったのは嘘だってことなのか?それじゃ、僕がわかるよってきみに言ったことのほうがよっぽどほんとうらしくて、信じるに値するじゃないか!」
「あなたのは嘘だもん、思ってないのに言ってるか、わかってないのに言ってるか、どっちにしろほんとう「らしい」だけでほんとうじゃない。私のは、わかってないじゃんも、服がないも、海が好きも、ちゃんとここにあったほんとうだよ」
彼は面白い、というように目を見開いてきらきらにしたあと、疲れたって言って急ぎ足になってそのまま消えってった、私の足元にはバラの花びらが一弁、鮮やかで大きな黄色いバラが好きだ、弱かったのに強くなった色。
私が謝るべきだろうか。謝って拗ねたら面倒だな。でも何も言わないまま過ぎる時間を耐えるのはきらい。
「あなたといると疲れる」